トイレの遺跡(土耳古の旅 其ノ十七)

おなじツアーに参加した若い人から、はじめての海外旅行について問われたので「一九七六年の三月に北京、天津、上海を旅したのが初体験でした」と答えたのはよかったが「その年の一月に周恩来が、九月に毛沢東が亡くなったから、ぼくが行ったときはまだ毛沢東は在世中だった」などと余計なことを付けくわえてしまい、一瞬こりゃたいへんなじいさんだといった眼で見られてしまった。
若者からすると毛沢東という歴史上の人物が生きていた頃なんてえらく遠い昔に思えるのだろう。当時の北京の公園のトイレは大小問わずドアはなく、百貨店の大きいほうのトイレでもスイングドアになっていて戸の上と下は吹き抜けだったからしゃがむと外から丸見えで、さすがの日本男児もちょいとたじろいだ。
写真はエフェソスにあるトイレの遺跡。大も小も仲よく連れ添ってできる水洗のつくりになっている。