「非常宣言」~大騒動と極限状態に魅了されたパニック映画

フライト・スリラーにウイルス・テロを絡めた韓流パニック作品。面白かったなあ。

つい先日、アイルランドのパブでいつもいっしょに飲んでいた友人との間柄を理由も告げず一方的に壊したあげく、指を切り落とす自傷行為を繰り返す、なんとかというわけのわからない、ひとりよがりのゲージュツ作品の毒気にあたって、しばらく映画館へ行くの止そうかと思ったあとで観たものですから面白さの度合は数等増した感もあります。

そういえばむかし「ピアノ・レッスン」という、こちらは指じゃなくて手首を切る映画を観たときも映画がいやになったことがありました。どうもこの自傷行為なるものを含んだゲージュツをわたしは苦手としていて、指詰めたり、手首を切ることで映画的魅力を覚えたのは「仁義なき戦い」の菅原文太と川谷拓三だけである。

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韓国の空港で、父(イ・ビョンホン)と幼い娘の二人連れにつきまとい、執拗に質問をしてくる不気味な若い男(イム・シワン)が現れる。このサイコパスとおぼしき男と父娘連れがいずれもハワイ行きK1501便に搭乗します。ほどなくして機内で一人の男性客の異状死が起き、おなじころネット上ではK1501便にウイルス・テロを仕掛ける犯行予告声明が出て衝撃が走ります。一瞬映った犯人の顔はあのサイコパスとおぼしき男でした。

機内では何人かの乗客、乗務員に異状死の男とおなじ症状が見られるようになり、ウイルステロによるものであることが判明します。

こうして上と下での大騒動が続くなか、上では機長が犠牲となり、副操縦士も罹患し、機内は大混乱、飛行不能の危機が迫ります。下ではウイルスの出所がサイコパスの勤務していた国際的製薬会社と知れるのですが、ウイルスの変異の可能性もあり、同社のワクチンの効果のほどがわかりません。

パンデミックの航空機はホノルル空港への着陸を拒否され、燃料切れが心配されるなか成田空港をめざすもののここでも拒否され、仁川空港では着陸拒否のデモが起こっています。

異常犯罪、航空、医療、危機管理、人情劇にわたるスケールの大きな作劇、それに妻の乗った飛行機はハワイじゃなくてホノルル行きだからよかったと一瞬安心するベテラン刑事(ソン・ガンホ)のボケやツッコミを含んだ合わせ技に大満足の百四十分でした。

(二月七日新宿バルト9