「アムステルダム」

ナチス絡みの素材をおしゃれに仕上げたエンターテイメント作品です。

第一次世界大戦直後から一九三0年代にかけてのアムステルダムやニューヨークのノスタルジックな映像、「ダイナ」「ピーナッツベンダー」など当時のヒット曲、あの時代に似合いの役づくりをした演技陣、そして米国におけるナチズムの台頭が絡む緊迫したストーリー。

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第一次世界大戦で米国から参戦し、戦地で知り合ったバート(クリスチャン・ベール)とハロルド(ジョン・デビッド・ワシントン)という二人の兵士と看護師のヴァレリーマーゴット・ロビー)は戦後もアムステルダムにとどまり傷病者の治療と看護に当たっていました。白人で医師のバート、看護にあたる黒人兵士のハロルド、白人女性の看護師ヴァレリーという当時にあっては稀有なトリオは時間をともにするなかで親友となりましたが、妻への思いが募るバートの帰国で共同生活は終わります。

そして一九三0年代のニューヨーク。医師を続けるバート、弁護士となったハロルド、しかしヴァレリーは行方不明で、再会は叶っていません。

ある日、バートは戦時中の上官の娘から、父の死が不審だと、死体解剖を依頼されます。解剖結果は彼女の推察通り毒殺で、そのことをバートとハロルドが伝えた瞬間彼女は何者かに車道に突き飛ばされ、車に撥ねられて死亡、二人の男は容疑者として追われる身となってしまいます。

濡れ衣を着せられた二人は疑いを晴らすほかなく、ここのところは追跡される「相棒」といった雰囲気で、やがて二人はナチスの関わる世界的な陰謀のなかにいることに気づきます。そこに奇妙なかたちで陰謀集団と接点を持ったヴァレリーが再登場、また殺された上官の盟友で元将軍ギル(ロバート・デ・ニーロ)がアムステルダムのトリオを吹き飛ばすほどの儲け役で出現します。

ストーリーはけっこうシリアス、心身にもたらされた戦争の傷痕も深い(バートは片目を失っています)、けれどアムステルダムの三人は軽いノリで飄々と陰謀集団と対峙します。シリアスと軽いノリの塩梅をどうみるかで評価は割れるでしょうが、わたしはよい味を出していると思いました。

監督は「アメリカン・ハッスル」「世界にひとつのプレイブック」のデビッド・O・ラッセル。豪華キャストを配し、ある巨大な陰謀に巻き込まれた三人の男女の行く末を史実とフィクションを巧みに交えて描いています。

(十一月三日 TOHOシネマズ日比谷)