厚生労働省の職員が三月二十四日に銀座で二十三人が参加する大宴会を開いていたことが発覚した。三月二十一日に新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言は解除されたが政府は解除後も大人数での飲食や歓送迎会を控えることを国民に呼び掛けていて、その本丸の組織での堂々たる送別会であり、時間も深夜に及んでいた。
江戸の昔、何を聞いてもヘイといい、かにを聞いてもヘイという、頭を畳にヘイヘイヘイヘイ、両手をついてヘイヘイヘイヘイとするうちに指導、助言、叱言は頭のうえを通過させる平平山人(平=ヘイもしくはハイ)という方がいらしたんですって。宴会に興じていた厚労省のお役人のニュースを聞いてこの平平山人を思い出した。
見つかったときは人のねたみ、世のそしりは免れないとわかっていて、それらを厭わずあえて宴会を催したのであればよくやったなと思わないでもない。宣言、通達のたぐいなどヘイヘイヘイヘイと聞き流し、文書は惜しむことなく紙屑籠に入れて、バレたときはそのときのこと、先例のないことにはあらず、昨年末には菅首相、自民党の二階幹事長らは先陣切って掟破りの宴会をしていた、というわけだ 。
そうした観点からすれば毎日新聞が社説に「昨年十二月には、菅義偉首相自らが自民党の二階俊博幹事長らと計八人で会食した。その後も、自民党や公明党の国会議員による銀座のクラブ訪問などが相次いで発覚した。いずれも厳しい批判を浴びたが、厚労省の職員には人ごとだったのだろうか」と書いていたのには見識を疑った。 厚労省の職員には人ごとではなく、上もやっていることだったのである。
今回の事態に、菅首相は「大変申し訳ない」と陳謝し「厚労相からも二度と起きないように点検と厳重な対処を(省内に)指示した」と述べ、二階幹事長は「(厚労省は国民)みんなの協力を頂いている。しっかり反省して対処してもらいたい」と苦言を呈した。
なんだか目くそが鼻くそを叱っている、あるいは女郎屋から出てきたばかりの人が道徳を説いているみたいだ。
緊急事態宣言発出決定のあと銀座の高級ステーキ店で忘年会を楽しんだ首相や幹事長の振舞いに、西村新コロ担当大臣は、一律に禁じたものではないとおっしゃったが、こちらはひらきなおりの平と愚考した。ヘイヘイ山人もヒラヒラ山人もいて世の中である。
毎日新聞の社説にあるように首相、幹事長の掟破りは批判を浴びたというかそれだけの話だったのにたいし今回の大宴会の課長は事実上更迭の憂き目をみた。均衡をとって厳重注意で十分だったのではないか。
どうせ宴会やるなら安倍晋三氏を見習ってホテルニューオータニに泊まり込み、五千円の格安宴会を案配してもらえばよかったんだよ。