新コロ漫筆〜余録

ことし二0二一年一月十八日に召集された通常国会では新型コロナ感染症対策とともに総務省の幹部職員と、利害関係者にあたる東北新社に勤める菅首相の長男たちとの会席が大きな問題となっていて、放送事業の許認可権を持つ総務省にたいし、東北新社側が接待攻勢をおこなっていた実態の一端が文春砲で明るみにされた結果、行政が歪められた可能性が取りざたされている。

新コロ漫筆は表題通りコロナ関連以外には触れないつもりだったが、せっかくおなじ国会で論議を呼んでいるもうひとつの問題に言及しないのは、ひとこと言いたい症候群の身にはあまりにもったいない。余録とした所以である。

想像ではあるけれど、首相の息子からのお誘いを利害関係者だからと断れば親父に睨まれて人事で報復されるかもしれず、応じれば応じたで文春砲に睨まれ、週刊誌で報道され処分を受ける、総務省のお役人たちには難儀なことである。

ずいぶん昔となったがわたしは平成四年(一九九二年)四月から七年間お役所に勤めた。現在はどうかわからないが、その当時いやだったのは宴席の多いことで、企業や団体(念のため利害関係者ではないと言い添えておきます)とのつきあい、退職者を含む業界ネットワークに組み込まれたさまざまな会、知り合いならともかく、付き合いはなく名前と顔を知るだけの方の表彰、叙勲の祝賀など、またエライさんには盃に手を添えて差し出さねばならず、そんなことを含め辟易してしまい、それまでは別に宴会を嫌いではなかったが一気にいやになった。

仕事がらみの宴会は日本酒がもっぱらなので盃のやりとりは避けられず、宴会がいやになるとともに日本酒もいやになってしまった。 退職して十年、いまも日本酒嫌いは身に沁みて、これからも一生口にすることはないだろう。

そうして役所の周りにはいろんな手合がいて、クレーマーにしてバーを経営する御仁など、電話対応からはじまって瑕疵でもないのに手落ちだと強弁し、それをネタにしては、手打ちを自身の店でおこなうのであった。

一度その経営するバーに行ったときのこと、はじめは行かないつもりであったが、同行するという他の課の職員がやってきて、夜中に無言の電話がかかってきたりするぞなどと脅された。妻子に迷惑をかけてはならず、闘う家長はこれで厭戦に転んだ。

後日、当のよその課の職員は出先機関長を集めた会議で、クレーマーには毅然とした対応を!と鉄面皮に語っていた。ここからうかがうに、首相の息子と盃を酌み交わしていた総務省の幹部たちも会議の冒頭のあいさつなどでは、すべて職員は、公務員倫理を保持し、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、職務の遂行にあたっては全力を挙げてこれに専念しなければならない、などとおっしゃっておられるだろう。

以上、菅首相の息子と総務省の高級官僚との会食をめぐる報道から、わが身の不名誉なことを含めあれこれを思い出したしだいである。

行政と宴会についてまがりなりに観察してきたわたしとしては、利害関係者か否かは問わず、仕事に酒、料理をからめるのをやめよと声を大にして言いたい。