「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」

新型コロナウイルスは高齢者に厳しいから緊急事態宣言が解除されてからも映画館へ行くのは控えていたのですがウディ・アレン監督の新作「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」が公開されたと聞くとそうとばかりはしていられず四か月ぶりに映画館へ足を運びました。ドキドキ。

ニューヨークでロマンチックな週末を過ごそうとしている大学生のカップル、ギャツビー(ティモシー・シャラメ)とアシュレー(エル・ファニング)。きっかけはアシュレーが学校の課題で有名映画監督にマンハッタンで会ってインタビューをするチャンスに恵まれたことでした。

生粋のニューヨーカー、ギャッツビーはアリゾナ生まれのアシュレーのために街を案内するプランを練り、アシュレーも心待ちにしています。さあ、行動開始、おっとそのまえにインタビューがありました。そこで待ち合わせの場所と時間を決めて解散したところからハプニングが続出して混線、錯綜した物語が繰り広げられます。

f:id:nmh470530:20200716165304j:image

手馴れたウディ・アレンの作劇術を美しく撮影されたセントラルパークやカーライルホテル、メトロポリタン美術館、雨のニューヨークの街路などが彩ります。その映像は若いカップルの経験する、軽いとはいわないけれど深刻にはならない悩みやとまどい、嫉妬、冒険といった心模様によくマッチしていて、観る者の心をくすぐり、よい気持にしてくれます。

音楽でいえば調和のとれたコード進行で奏でられるメロディ、聴きなれた心地よいリフナンバーといったところでしょうか。たくさん用いられている楽曲のなかのメインはジャズのスタンダードナンバー「Everything Happens To Me」、待ち望んでいたニューヨークでの週末なのに期待はずれなことがつぎつぎと押し寄せてくる、マイナーな出来事ならなんでもありといった物語がとりあえず収まるところに収まって、そこに「Misty」が流れて、霧に包まれた若者たちのこれからが観客の想像に託されるのでした。

(七月十四日ヒューマントラストシネマ有楽町)