「ブラックブック」(2015オランダ、ベルギーそしてパリ 其ノ二十一)

オランダを舞台にした映画といえば「アンネの日記」「真珠の耳飾りの少女」「小さな目撃者」などが思い浮かぶが、旅行に出るまえ予習の一環として、いま国際司法裁判所をはじめ百五十ちかい国際機関があり、ニューヨークに次ぐ国連都市として重要性の高まるデン・ハーグが舞台となった「ブラックブック」(2006年)を再見した。オランダ出身で「ロボコップ」や「トータルリコール」のポール・ヴァーホーヴェン監督が二十三年ぶりに帰郷して撮った作品だ。

時代はナチス占領期。ドイツ兵に家族を皆殺しにされたユダヤ人女性エリスがレジスタンスに加わり、ユダヤ人であることを隠してドイツ軍に潜りこみ、親衛隊のムンツェ大尉の秘書としてスパイ活動を始めるが、まもなく二人は惹かれあう仲となる。いっぽうレジスタンス内部にもナチスのスパイがいて二人は危険に曝される。そうした事情が戦後に持ち越されてエリスはナチスの協力者とされ……レジスタンスは善、ナチスは悪といった単純な二分法とは異なる視点で描かれた戦争映画でありスパイ、サスペンス映画の秀作である。

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