三月三日、東京マラソン2019を走った。
退職してから、毎年応募しつづけ、今回八回目にしてようやく当選の通知をいただいた。30キロまでは目論見通りだったのに魔物が棲むといわれる35キロあたりで膝痛に襲われて難渋したが、なんとか老骨に鞭打ってフィニッシュできた。(速報値では9:19:40スタート、15:33:52ゴール)
気温は低く、冷たい雨の降るなかゴールを駆け抜けたと書きたいところだが、せいぜい膝をかばって駆ける真似くらいのところだった。
ハーフマラソンで膝の痛みを覚えたことはなく、対してフルマラソンはまことにやっかいだ。魔物を退治するためには走法とトレーニングの改善に努めなくてはいけないとわかっているのだけれど……。
それはともかく、二月二十八日にお台場で本人確認、選手登録をして、ゼッケンナンバーと時計チップを渡され、リストバンドを巻いたところでぐっと緊張感が高まり、会場にあったボードに「完走 ひとし」と思いを書いてきた。
前日になると緊張に不安が加わり、ずいぶんと寝苦しかった。38000人が参加する大会となるとこんなに胸騒ぎがするのか。おまけに、この日、スーパーラグビーでサンウルブズがニュージーランドの強豪チーム、チーフスに快勝した興奮も寝つきの悪さにひと役買っていたようだ。
それでも朝になると「熟考する時間をとれ。しかし行動する時がきたら、考えるのをやめて進め」(ナポレオン)という状態になっていた。
長い時間を走っていると、ときにいろんなことを思い、考える。その意味でマラソンはとてもメンタリティの要素の強い競技だと思う。30キロあたりで、七十歳近くなってマラソンを走られる身体に産んでくれた亡父母に感謝したところで、胸がキュンとなり、うるうるし、さあゴールめざしてひと頑張りだ、と気合をいれたあと膝痛になったからこれも万物流転の一例か。
そしてきょう、三月五日。
膝痛は歩くのには不自由ないが、膝を上げるとまだ痛む。ウォーキングはよいが、階段の上り下りには気を遣う。ランニングは十分休養をとり、しっかり治してから再開しなければならない。その他はすべて快調。
昨日、SNSに、老骨に鞭打ってようやくフィニッシュした、と書いたところ、元の上司から、老骨などと言いなさんな、その調子なら八十まで走られるんじゃないか、とのおたよりを頂戴した。いつもながら先輩のご指導、励ましはありがたく、いただいた完走メダルを眺めながら決意を新たにした。
フルマラソンの後半の後半は、なんて過酷なスポーツだと思う。だけど一夜明けると気分は一新していて、来年の東京マラソンもぜひ当選を、と願っている。