ディオクレティアヌス宮殿(晩秋のバルカン 其ノ三十六)


ディオクレティアヌスは高校の世界史の教科書ではおなじみのローマ皇帝だ。
いわゆる軍人皇帝時代を収束させ、帝国の安定化をもたらしたのはこの人だったし、ドミナトゥスと呼ばれる専制君主制を創始した皇帝として、さらに帝国の四分割統治をはじめた皇帝としても知られる。
四分割統治はローマが荒廃し、帝国の重心が東方に置かれるようになった事態への対応策で、やがて帝国が東西に分裂する契機となった。また勢力を伸長させていたキリスト教マニ教に大弾圧を行った皇帝でもあり、キリスト教史のうえでは「最後の大迫害」と呼ばれている。
といったことを半世紀ほど前の受験生(わたしのこと)はひとなみに学習したわけだが、さすがにこの皇帝がスプリトに宮殿を建設し、引退してからここで生活したなんて話は知らなかったし、教員になり世界史を教えるようになっても知らなかった。