「灼熱」(2016晩秋のバルカン 其ノ十七)


バルカンの旅から帰ると折よく渋谷のシアター・イメージフォーラムでダリボル・マタニッチ監督「灼熱」が上映されていた。旧ユーゴスラビアの内戦を背景とした映画で、二0一五年第六十八回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞している。
オムニバス作品として一九九一年、二00一年、二0一一年と十年おきに設定が変えられているが、いずれもクロアチア人男性とセルビア人女性との恋愛をめぐる物語で、三つの時代の異なるエピソードを通じ内戦とともに揺れた愛のありようが描かれている。
製作にはかつて激しく戦ったクロアチアスロベニアセルビアの三カ国の名がある。平和が戻ったといっても底流、深層には辛い過去が潜んでおり、民族、宗教をめぐる対立感情はなお強く残っているなかでこの三つの国の映画人が提携して製作にあたったことはこの地域に関心を寄せる者としてうれしい。