『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(2016晩秋のバルカン 其ノ六)


東ヨーロッパにかんして思い浮かぶ一冊に米原万里嘘つきアーニャの真っ赤な真実』があり、もう一度読みたいと思いながらそのままだったのが今回の旅行を機にようやく再読した。
著者は大田区立馬込小学校三年生のとき、父親が日本共産党代表として参画していた国際共産主義運動の理論誌『平和と社会主義の諸問題』の編集委員に選任され、編集局のあったチェコスロバキアプラハに赴任することとなり一家で渡欧した。転校先はソ連が設けたロシア語学校で、彼女は一九六0年から六四年にかけてここで学んだ。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実』は、転校先での体験、三人の女友達とのこまやかな交情、そしてソ連崩壊後の彼女たちとの再会が主たる内容で、それぞれの人生が国際情勢の変化とともに浮き彫りにされる。三人の親友はギリシア人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。本書でヤスミンカが恰好なベオグラード案内を語っているので次項で紹介してみよう。