セルビア正教会(2016晩秋のバルカン 其ノ四)


ことし(二0一六年)の五月にモスクワとサンクトペテルブルグを旅してロシア正教の寺院をはじめいくつかの宗教施設を見学した。ソ連崩壊の賜物で、いまなお社会主義国家が健在ならばこうはまいらなかっただろう。
ソ連は革命遂行の名のもと聖職者、信者に対する処刑や流刑、教会の強制的閉鎖などひどい宗教弾圧を行った。一九三0年代の十年間だけでも三万人から四万人のロシア正教会聖職者が銃殺もしくは収監されたといわれている。
おなじ社会主義国ではあるが旧ユーゴスラビアでの宗教弾圧は聞かない。カトリックセルビア正教イスラム教の分布の複雑さもあるが、それよりもチトー大統領の施政方針によるところが大きかったと考えられる。一九九0年代の内戦でチトーの遺産は吹き飛んだ観があるけれど、社会主義の時代に宗教施設が損なわれなかったことは特記に値する。