「コンフィデンシャル/共助」

昨年韓国で大ヒットした「コンフィデンシャル/共助」をみたのは韓国と北朝鮮がいっしょに入場行進した平昌オリンピック開会式の翌日で、意図したことではなかったがみょうな因縁ではあった。

北朝鮮の刑事組織の幹部チャ・ギソン(昨年事故で歿したキム・ジュヒョク)が職権を利用してアメリカドルを偽造し、巨利をむさぼったうえ偽札作成の銅板を奪って韓国へ逃亡した。北朝鮮は銅板の件は隠し、国際犯罪者の追跡と逮捕を極秘裏に韓国に要請し、韓国側もそれを受け入れた。これをうけて北はチャ・ギソンの部下のイム・チョルリョン(ヒョンビン)刑事を韓国へ送り込んだ。かれは上司のチャ・ギソンの行動に不審をもっており、そのためギソンにより妻と仲間を殺害されていた。
いっぽう韓国は仕事のミスから停職中のカン・ジンテ刑事(ユ・ヘジン)を担当に命じ、イム・チョルリョン刑事とともに捜査にあたらせる。
その裏でイム・チョルリョンには秘密のうちに銅板を奪い返す任務が、カン・ジンテには北朝鮮の本当の狙いを探るための偽装捜査が命じられていた。こうして思惑を秘めながらの南北共助捜査がはじまった。北からやって来たクールな堅物の二枚目と南の人情派三枚目による南北合同チームの結成だ。ついでながら映画の世界ではグレダガルボが主演した「ニノチカ」のむかしから共産圏から来たほうが美女、美男を演じるのがふつうといってよい。
韓国では二0一七年上半期動員NO.1となった大ヒット作品。上半期といえば朴槿恵前大統領の弾劾、罷免に伴う選挙で勝利した文在寅氏が大統領に就任したのが同年五月十日、二つを合わせると南北の対話に前向きな新大統領へのご祝儀のように見えるけれど、それは別にして映画の出来具合はユーモアをまぶした刑事ものアクション作品としてとてもたのしめるすぐれものである。
二人の刑事は捜査を進めるいっぽうで秘密指令も果たさなければならない。そのために牽制したり、騙したり、出し抜いたり、でも体制の違いはあっても現場で苦労する刑事どうし、互いの心情はよくわかる。そうするうちに、カン・ジンテがイム・チョルリョンを自宅に誘うと同居する義妹の大学生が北のイケメン刑事にひとめぼれ。派手なカーアクション、銃撃戦、格闘戦にお笑い、ドタバタ、人情話がふんだんに盛り込まれ、南北のカルチャーギャップが浮かび上がる。
この映画が大ヒットした背景にある韓国の北に対する国民感情をもっと知りたい、それに脱北者はこの映画をどんなふうに感じるだろうと思いながら劇場をあとにした。
(二月十日TOHOシネマズ新宿)