豹の岩(2015初夏台湾 其ノ二十四)


犬吠埼にはその名の通り犬のかたちをした奇岩がある。そこから連想して野柳地質公園にも小ぶりながら犬の岩があるなと思ったところ豹をかたどった岩であるとの説明があった。
落語の「ねずみ」では左甚五郎が仙台の鼠屋という貧乏旅籠のためにねずみを彫り、竹網をかけて「福ねずみ」と名付け、これが動くと大評判になる。鼠屋ははじめ虎屋という大旅館のあるじだったが番頭と後妻の姦計で店を乗っ取られていた。「福ねずみ」の評判を妬んだのが元番頭の虎屋の主人で、さっそく仙台一の彫り物師に虎を彫らせて「福ねずみ」を見下ろすところに置いたところ「福ねずみ」がぴたりと動かなくなる。
これを鼠屋の主人からの手紙で知った甚五郎が仙台を訪れ、動かなくなったねずみに、おれは魂を打ち込んで彫ったつもりだが、おまえ、あの虎がそんなにこわいかいと言うとねずみが、あれ虎ですか、あたしは猫だと思っていましたというところで落ち。
ねずみは虎を猫とまちがえ、わたしは豹を犬とまちがえたのでありました。