「バーフバリ 王の凱旋」

年甲斐もなく血潮が滾った。ギリシア悲劇と超絶活劇との極上の合体それともギリシア悲劇を昇華させた超絶活劇というべきか。いずれにせよこのインド映画はそれをゲージュツ関係おまへんの波乱万丈エンターティメントの追求とハッピーなミュージカルのノリで軽々とやってのけた。
本作は「バーフバリ 伝説誕生」の後篇にあたる。不覚にも前作は未見だが、冒頭に親切なダイジェスト映像が付けられてあるから心配に及ばない。ちなみに前作はインド国内で大ヒットし、インド映画としてはじめて全米映画興行収入トップ10入りを果たしたそうだ。監督、脚本は前後篇ともS・S・ラージャウマリ。

物語は遠い昔のインド、マヒシュマティ王国の王位継承をめぐる骨肉の争いにはじまる。
蛮族カーラケーヤとの戦争に勝利した王国の国母シヴァガミは、実子のバラーラデーバ(ラーナー・ダッグバーティ)ではなく、前王の息子アマレンドラ・バーフバリ(プラバース)を王位継承者とする。
敗れたバラーラデーバはバーフバリがクンタラ王国の王女デーバセーナと恋仲にあるのを利用して陰謀をめぐらせ、バーフバリの王位就任を阻止する。王位と引き換えにバーフバリはデーバセーナを妃にし、長男をさずかるが、さらなる策謀により殺害され、事態はギリシア悲劇の色彩を帯びる。
国王となったバラーラデーバはデーバセーナを強奪し、長男を殺そうとするがバラーラデーバのはたらきにより子供はかろうじて逃れシブドゥとして育てられる。
二十五年ののち、みずからが伝説の王バーフバリの息子であると知った若者シブドゥ(プラバース二役)は、マヘンドラ・バーフバリとして暴君バラーラデーバに戦いを挑む。こうして詭計に陥り亡くなった王の遺児は怒涛の復讐戦へと臨む。
紀元前二世紀頃から西暦後一世紀頃までの間に主にインド亜大陸北西部に勢力を持ったギリシア人の諸王国の総称をインド・グリーク朝という。そのまえにはアレキサンダー大王の遠征もあった。ギリシア悲劇は古代史上のインドとギリシアを繋げているのではないか。この映画はそんな気を起こさせる。
(一月三日丸の内TOEI)