元宵観燈(2015初夏台湾 其ノ十三)


十份では毎年元宵節に「平溪國際天燈節」という国際的なランタンフェスティバルが催されている。大陸のほうでもこの時期、天燈(ランタン)は華やかに飾られているだろうが、こうしたフェスティバルが挙行されているといった話は聞かない。
元宵節と天燈の歴史は古く、なかでも唐代のそれはめざましかったという。石田幹之助の名著『長安の春』の一篇「唐代風俗史抄」には、元宵前後の数日は「唐代の歳時記を飾る豪華第一な習俗」であり「都鄙を通じて家ごとに意匠を凝らし巧緻を極めた灯籠を無数に懸け連ね、月明と光を争ふその火影を追うて今日を晴れと着飾つた子女老若が夜もすがら歌ひ且つ踊つて暁に及び、ひたすら刻の移るのを惜し」んだとある
こうした習俗は六朝時代の末にはすでにあったと考えられており、隋の時代には文献史料に記されている。そして唐の時代に普及し、花開き、それがいま十份に及んでいる。