「ポルトガルの四月」(西班牙と葡萄牙 其ノ五十五)


「四月のポルトガルは愛の理想郷、恋人たちは狂い、空はもっと狂う、四月のポルトガルはなにもかも素敵、いつかまたここに来て見たいわ」。イヴェット・ジローが一九四九年に歌ってヒットしたシャンソンポルトガルの四月」の一節で、上の訳詞は壺齋散人という方のブログ「フランス文学の詩と世界」より。
いっぽうジャズの名曲「パリの四月」は、マロニエの花咲く四月のパリ、思いもしなかった春の魔力、とこの街を讃える。そのパリから見て「ポルトガルの四月」は極上の魅力を放っているのだろう、イヴェット・ジローの歌を聴いているとそんな気持になってくる。
リスボンの街角やテージョ川のほとりから彼方の大橋を眺めた三月のポルトガルに惹きつけられたのに、このうえあとひと月すれば「ポルトガルはなにもかも素敵」と歌われる季節を迎える。「いつかまた」じゃなくて四月にまたここに来てみたい。(おわり)