パティオ(西班牙と葡萄牙 其ノ四十)


セビリアの旧ユダヤ人地区サンタクルス街は二十世紀のはじめに再建されたものだが、かつての面影は色濃く残っているとのことだ。
ユダヤ人は徴税を請け負ったり、金貸しの仕事をしていたために住民の恨みを買いやすく、しばしば暴徒の襲撃を受けた。かれらを保護するためカスティリア王国アルフォンソ十世(在位1252-1284)は王宮(アルカサル)に近いところにユダヤ人居住区を設けた。サンタクルス街の由来だ。
しかしその後もユダヤ人排斥の動きは止まず、十五世紀になると他のキリスト教国とおなじくその動きを強めた。
この地区には狭い小路に密集する白壁の家々がある。家屋の構造はムーア人の伝統と文化から生まれたもので、パティオ(中庭)が夏の激しい熱気を防ぎ、樹木や鉢植えの花々が涼やかな空気をもたらしてくれている。