サンタクルス街(西班牙と葡萄牙 其ノ三十九)


セビリアの大聖堂、宮殿、博覧会の会場といった大がかりなところをめぐったあとは石畳の路地の入り組んだ旧市街のサンタクルス街へ。もとのユダヤ人地区で迷路のようなたたずまいだ。
わたしたちが訪れたのはさわやかな空気に包まれ、やわらかな陽が射す午後で、花木や白壁のあいだの小路の散策はうれしいひとときだったが、聞けば夏の夜のサンタクルス街はひときわ魅力的だとか。
アルハンブラ宮殿 南スペイン三都物語』(日経BP企画)という本に「セビリアを見ていない人は、奇跡を見ていない人」という言葉の紹介があり、具体に夏の夜のサンタクルス街のそぞろ歩きが述べられていた。
「月の光に白壁が青白く浮かぶ小路。照明に美しく浮かび上がるパティオ(中庭)。夜気を誘うジャスミンやオレンジの甘い香り。バルから聞こえてくる歌声や話し声。セビリアの夜は、甘美なアンダルシアの夜の中でも、特に官能的である」云々。