スペイン広場(西班牙と葡萄牙 其ノ三十八)


一九二九年セビリアでイベロ・アメリカ博覧会が催された。従来の商品見本市ではなく文化的な催しもくわえた総合博覧会は当時としては斬新な企画だった。イベロ・アメリカはアメリカ州でかつてスペインとポルトガルの植民地だった国々及びイベリア半島のスペイン、ポルトガルを指していて、その会場としてスペイン広場(写真)とアメリカ広場が建設された。
広やかで美しいスペイン広場は十九世紀末、当時の所有者だった王女マリー・ルイーズから市に寄贈された地で、日本風に言えば恩賜公園だったところを整備しパビリオンを建てた。パビリオンはセビリアのアルカサルで用いられたスペイン独自の建築様式であるムデハル様式が取り入れられている。大きな半円形の回廊と両翼の先端には八十メートルの高さの塔がそびえる。広場にアクセントを添える運河にはヴェネツィア風の橋が架かる。その四つの橋はかつてのカスティリアアラゴン、レオン、ナバラの四つの王国を意味している。