アルカサル(西班牙と葡萄牙 其ノ三十七)


アルカサルと呼ばれるセビリアの宮殿は勝利の広場(プラサ・デル・トゥリウンフォ)を挟んで大聖堂と向き合っている。十四世紀後半カスティリア王国ペドロ一世がムーア人の建築家を呼び集め、ムデハル様式というスペイン独自の建築様式で建てた王宮である。ムデハル様式レコンキスタのあとなお残留したイスラム教徒(スペイン語でムデハル)の建築様式とキリスト教建築様式を融合させたもので、イスラム教徒の建築様式が組み込まれているのはグラナダアルハンブラ宮殿の影響もあるだろう。
イスラム勢力を追い払ったあとになおかれらの建築様式を残したのは政治と文化の分離志向によるもので、それだけイスラムの文化に惹かれていたと思われる。
アルカサルへの正門として使われているのが朱色の壁にライオンの紋章のあるライオンの門。馬蹄形をしたムーア式の城門である。