世界一小さな闘牛場(西班牙と葡萄牙 其ノ三十五)


スペインの闘牛は日本の相撲にあたるとどなたかがおっしゃっていた。国技にして宗教性を帯びていて、スポーツというだけでは割り切れないと言われると、なるほどと思えてくる。
スペインには五百を超える常設闘牛場があり、なかで一九00年に設けられたミハスのそれは珍しい四角形をしていて、世界一小さな闘牛場として知られる個性的な闘牛場である。
昭和四年に刊行された谷譲二『踊る地平線』に「闘牛には季節(テンポラダ)がある。復活祭から十月までの毎日曜日と祭日が正規の闘牛日だ。十月以後にもあることはあるが、それはいわゆる小闘牛(ノヴイラダ)といって、牛は若牛(ノヴイロス)、闘牛士も幕下どころの下級闘牛士(ノヴイレロ)で、本格じゃないからどうも見劣りする」とある。移動祝日のイースターは早くて三月下旬だから、わたしたちが訪れた二0一五年三月三日火曜日の闘牛場は闘牛の季節を迎える前の静かな空気に包まれていた。