コマレスの中庭(西班牙と葡萄牙 其ノ二十八)


スペインにおける最後のイスラム王朝となったナスル朝アルハンブラ宮殿キリスト教徒軍に無血開城したのはコロンブスが新大陸を発見した一四九二年のことで、これによりレコンキスタは完遂されたが宮殿は残された。散策しながら魅力と魔力が宮殿を残したのではなかったかと思った。
写真はコマレスの中庭、正面にコマレスの塔、中央に貯水池、周囲を生け垣が縁取っている。左右の建物は王の四人の正妻の住まいだった。残念ながらわたしたちは塔に上がる時間はなかったが『アルハンブラ物語』が塔内の様子とそこからの眺めを伝えてくれている。
入口をくぐると急な螺旋階段があり、頂上は狭間胸壁で、戦時の王はここから敵軍の動静や戦闘の状況を見守った。
著者のアーヴィングは見渡したものとして「グラナダ市街、周縁部の田園地帯、峩々たる岩山、緑なす渓谷、肥沃な平野、館、カテドラル、モーロ人の時代の塔群、ゴシック様式のドーム、廃墟、花咲く森等々」を挙げている。