ラ・マンチャ(西班牙と葡萄牙 其ノ二十一)


ラ・マンチャ地方のコンスエグラの丘には十一基の風車が並んでいる。コンスエグラは人口一万ほどの小さな町だが、ここの風車はミゲル・デ・セルバンテスの著したドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの物語といっしょになって世界中から観光客を呼び寄せる。
訪れた人々は、自らを伝説の騎士と思い込んだドン・キホーテが従者サンチョ・パンザを連れて旅している姿や愛馬ロシナンテにまたがり風車に突撃する光景を、風車を前にして思い描くことになる。
風車がラ・マンチャ地方に建設されたのは十六世紀、また『ドン・キホーテ』は正篇が一六0五年、続篇が一六一五年に刊行されている。十六世紀から十七世紀にかけてのスペインはハプスブルク家の支配する国外での戦争の影響を受け続けたが、そのなかにあってラ・マンチャは風車と文学を取り合わせて一大観光資源をものにしたわけだ。