トレド一望(西班牙と葡萄牙 其ノ十七)


「一日しかスペインにいられないのならトレドに行け」という名言があるそうだ。そこまで言われれば行かずにはすまない。当地はマドリードの南およそ71kmのところに位置するカスティーリヤ=ラ・マンチャ州の首都で、タホ川に面し、この川に囲まれた旧市街は世界遺産に登録されている。
かつては西ゴート王国の首都であり、八世紀はじめにはイスラム支配下にはいったが、十一世紀にはカスティーリヤ王国のアルフォンソ六世が入城した。キリスト教勢力とイスラム教勢力とが角逐した場所であったが、そのいっぽうでは十二世から十三世紀にかけてイスラム教徒、ユダヤ教徒キリスト教徒の共同作業によって古代ギリシア、ローマの古典がアラビア語からラテン語に翻訳され、ルネサンスに大きな影響を及ぼした。
歴史と町の眺めを三つの宗教、文化が対立、協働しながらが彩っているようだ。