「ディバイナー 戦禍に光を求めて」

第一次世界大戦後、オーストラリア人の農夫ジョシュア・コナー(ラッセル・クロウ)は、戦争で行方不明となった三人の息子の遺骨を探すために戦場だったトルコへと向かう。息子たちの不幸に衝撃を受けて自殺した妻の願いを叶える旅でもあった。
スクリーンには実話に「インスパイア」された物語とあった。

三人の息子たちが戦ったのは第一次世界大戦、トルコのガリポリの戦いだった。この映画で知ったその戦いで、連合国軍はガリポリ半島に上陸しイスタンブール占領を目論んだが、オスマン帝国軍の抵抗により苦杯をなめなければならなかった。オーストラリアとニュージーランドにとってははじめて海外に派兵した戦いで、おそらくオーストラリア出身のラッセル・クロウが長年あたためていた素材だっただろう。
ジョシュア・コナーが異国の地に降り立ったのは一九一九年、ガリポリの戦いから四年が経過していた。困難を極める遺骨の捜索には、その途上で出会った人々の助けと、かつての敵軍の協力を求めなくてはならなかった。かすかな希望はそこにしかない。そして希望は遺骨発見の可能性と世界大戦で敵対した国民どうしの新たな関係の可能性という両義性を帯びる。
遺骨収集をめぐる物語の展開は比較的読みやすく、描写の重点は後者に置かれている。そこからラッセル・クロウ監督の思い、メッセージがおのずと伝わってくる。
原題はThe Water Diviner。水の占い師。自然環境の厳しいなかにあって農夫は子供たちとともに井戸を掘りあてなければならなかった。家族は水につながれてようやく農業を営むことができた。その水は遺骨収集の旅を通じて敵側だったトルコの人の心にも沁みてゆく。
イスタンブールを中心とするトルコ各地の映像が魅力で、ブルーモスクの内部やガリポリ半島の洞窟住居など印象に残る場面は多い。
(三月八日有楽町スバル座