台東区役所総務課


昭和三十三年に公開された刑事映画の傑作「張込み」(野村芳太郎監督)で、東京から佐賀へと犯人を追うベテランの下岡刑事(宮口精二)と若手の柚木刑事(大木実)は猛暑のなか昼夜を分かたぬ張込みを続ける。
こういうときは飯と菜を同時に食べられる料理が便利で、この作品でも二人の刑事がカレーライスを食べる場面がある。サンドイッチは二十四時間賭け事をやりながら、そのかんパンのスライス二枚のあいだに何やかや挟んで食べたのが由来だとか。丼物やカレーライスにも同様の発想があったのかもしれない。
張込みの甲斐あって二人は犯人を連行して東京へ向かう列車に乗り込むが、その前に柚木刑事は、家庭の事情で結婚をためらっている恋人高倉弓子(高千穂ひづる)に、あらためて結婚の意思を示す電報を打つ。犯人の許嫁だった横川さだ子(高峰秀子)は別の男と心ならずもの結婚をしていた。柚木はその生活を見て止むにやまれない気持になっていた。
電報の宛先は弓子の勤務先、台東区役所総務課。