「クサル」(モロッコの旅 其ノ四十三)


たくさんの映画が撮影されただけあってアイト・ベン・ハッドゥは絵になるところだ。現地のガイドさんはここを「クサル」と呼んでいた。要塞化された村という意味だ。「カスバ」も城塞に囲まれた居住地区を言うので意味はほぼおなじだが、ガイドブックによると「カスバ」にはどんなに小さくても司令官などエライさんが住んだのに対し「クサル」は社会的地位と関係なく複数の家族が居住していた。というわけでアイト・ベン・ハッドゥはげんみつには「クサル」なのだった。
この「クサル」にはかつてはベルベル人の家族が多く生活していたそうだが、ほとんどは新市街に移り、いまは数えるほどの人たちが住んでいるだけだそうだ。もっとも土産物店、レストラン、喫茶店などは営業していて、街路に立っておみやげを売る人もいる。かれらの多くは新市街から通いでここに来ているのだろう。職住分離のアイト・ベン・ハッドゥなのだった。