ベルベル人のテントで(モロッコの旅 其ノ三十八)


サハラ砂漠からの帰途、ベルベル人のテントを訪れた。井戸があり、山羊が放し飼いされていた。ここでもミントティーをいただき、しばしの砂漠でのティータイムを過ごした。
ほとんどが牧畜と農業で生活するベルベル人だが、この環境における一年の生活の具体的な姿となると想像もつかない。山田吉彦『モロッコ』には「サハラ前哨地帯の遊牧民は貴族階級で、戦闘と商業をやり、大きい勢力を持っている。豊穣なオアシスを所有しているのはこれ等の遊牧民である。彼等は彼等のカスバ、彼等の店を持ち、なつめ椰子の林や庭の世話は定住農民に任せて、牧畜の季節に戻ってくる」とあるが、六十年以上前の本なので、いま、そこにある生活がどれだけ反映されているかはわからない。
先住民ベルベル人とアラブ人とのあいだに対立と緊張の関係があるのはたしかだが融和は進んでいると聞いた。「アラブの春」でモロッコ国内の民族問題が惹起しなかったのはあるいはそうした事情があるのかもしれない。