「シェリタリング・スカイ」(モロッコの旅 其ノ三十七)


スクリーンでのサハラ砂漠となるとやはりベルナルド・ベルトリッチ監督「シェリタリング・スカイ」だ。これほど存分にサハラ砂漠が映し出される作品はほかにない。
第二次世界大戦後まもない1947年、ニューヨークからモロッコへある夫婦がやって来る。かつての愛も夢も喪失したと自覚する二人は、この旅で何かを発見できるかもしれないと期待していたのだが、旅を続けるうちにかえって関係はこじれ、さらにさまようといったエキゾティックなラブ・ストーリーだ。原作はポール・ボウルズの同名小説。これについて四方田犬彦は「あまりに遠くに行ってしまったために、もはや帰還が不可能と化してしまった者たちの寓話」と述べている。(『モロッコ流謫』)
それはまた砂漠での生活に自分を同一化することもできず、生まれ故郷のニューヨークへも帰る意思はなくモロッコに留まり続けた作者ボウルズの姿でもあった。