はんぺん(春の銚子で 其ノ十三)


スケトウダラなど魚肉のすりみにすりおろしたヤマノイモを混ぜてさらにすり、調味して薄く四角形または半月型にしてゆでた魚肉練り製品をはんぺんという。ヤマノイモが使われていたなんてこの稿を書くために調べてみてはじめて知った。
はんぺんをはじめて食べたのはいつだったろう。大学生になって上京してのちだったのはたしかで、郷里の高知で口にした記憶はなく、たぶん二十歳を過ぎてどこかのおでん屋で食べたのだろう。もともと関東周辺だけで食されていた地域色の強いものでいまも消費の殆どは関東周辺だそうだ。
ふんわりとした滑らかな舌触りを好むか、「麩と蒲鉾の間の子といふ風な頼りがいない」(吉田健一)と感じるかは人それぞれでしょう。いずれにせよ銚子という魚どころではんぺんを見逃すテはなく、今宵はこれを肴に家呑みだ。