ボスフォラス大橋を眺めながら(土耳古の旅 其ノ四十五)


もうだいぶん前に故人となられたが、尊敬する高校の先生にS先生という方がいらした。純朴誠実な人柄にして博覧強記、ひとたび話題が歴史学に及ぶと静かななかにも学問への情熱がほとばしるほど熱を帯びた。担当科目は世界史で、早稲田の文学部と修士課程でユダヤ教と初期キリスト教の歴史を勉強されていたから、中東の歴史にたいへん詳しかった。
欧米や中国についての歴史像は比較的描きやすいのにたいして中東地域となるとむつかしいと感じる人は多く、高校の世界史の先生にも中東の歴史がウイークポイントとなっている方は多いような気がする。
S先生の授業やお話をおうかがいするうちに、国際政治の理解においても欠かせないこの地域について自分ももっと勉強しなくてはと思った。そして・・・・・・しなかった。悔いても詮ないことではあるが。