「トレヴィの泉で二度目の恋を」

シャーリー・マクレーンはまことに愛らしく、クリストファー・プラマーはすこぶるかっこいい。年輪がしっかり刻まれた魅力であり、名優たちの歳月がこの映画の彩りを豊かに、そして味わいを深くしている。

妻を亡くした堅物の老人フレッドが娘の勧めたアパートに引っ越して来た。隣室には陽気で世話好きの女性エルサが住んでいて、こちらもずいぶん前に離婚していて伴侶はいない。
フレッドの屈託した心情をエルサはすこしでも和らげようとするうちに八十歳と七十四歳の二人はだんだんと惹かれあう。するとこれまで見えていなかった部分や秘密も知るようになる。自由奔放な女には虚言癖があり、実直で偏屈な男はロマンティックな曲をギターで奏でる一面を持つ。やがてエルサの虚実さだかでない言葉のなかにフレッドはひとつの真実と夢を見出した。
フェリーニの「甘い生活」に憧れ、映画のなかでマルチェロ・マストロヤンニアニタ・エクバーグが戯れるトレヴィの泉に行きたいというエルサの長年の夢を、フレッドは彼女とともに現実のものに変える。そしてアメリカからローマに飛んだ二人に「甘い生活」のトレヴィの泉のシーンが重なる。フェリーニへの素敵なオマージュが心を打つ。
おっちょこちょいのわたしは標題からして大好きなイタリアの風景がふんだんに観られるだろうと思って映画館に足を運んだが「エルサとフレッド」(原題:Elsa & Fred)がアメリカからローマへ飛ぶのは後半の後半、しかしそのローマの名所、風景は名優二人の演じた物語にみごとに花を添えていた。
監督はマイケル・ラザフォード、本ブログでは同監督の「情熱のピアニズム」を採りあげている。よろしければご覧になってみてください。
(二月二日Bunkamuraル・シネマ)
http://d.hatena.ne.jp/nmh470530/searchdiary?word=%BE%F0%C7%AE%A4%CE%A5%D4%A5%A2%A5%CB%A5%BA%A5%E0(「情熱のピアニズム」)