宮殿のなか(土耳古の旅 其ノ三十八)


トプカプ宮殿を舞台とする映画といえばエリック・アンブラー『真昼の翳』を原作とするその名もズバリの「トプカピ」(ジュール・ダッシン監督)だろう。一九二四年トルコ共和国トプカプ宮殿を修復したあと博物館として開放していて、真偽はわからないがここにエメラルドで飾られた宝剣があり、女泥棒のエリザベスが盗みを企てる。ただし陳列室のフロアは厳重な防御装置で固められている。そのために発明家や軽業師といったプロジェクトチームが編成されて、天井からケースを持ち上げて贋物とすり替える作戦が立てられる。ここへひょんなことから迷い込んだのがイギリス人の詐欺師でトルコ国家警察のスパイであるシンプソン。
エリザベスは「日曜はダメよ!」のメリナ・メルクーリで後にギリシャの文化大臣を務めた。いっぽう詐欺師のシンプソンはピーター・ユスチノフが演じてアカデミー賞助演男優賞を受賞、こちらはのちに名探偵ポアロとなった。