隊商宿の中庭で(土耳古の旅 其ノ二十七)

隊商宿はふつう中庭がある二階建ての建築物で、一階は取引所、倉庫、厩、管理人や使用人の住居にあてられ、二階は客人である隊商の商人たちの宿泊施設となっていた。(Wikipedia)駱駝や馬を入れなければならないので入口の天井は高い。
石田幹之助先生の名篇「長安の春」には晩唐の詩人韋荘の同名の詩が引かれていて「長安二月多香塵、六街車馬聲鈴凛。家家楼上如花人、千枝萬枝紅艶新」とある。
旧暦二月、春の盛りの都は殷賑をきわめ、都の大通りは車馬が音を立てて行きかう。家々には花にたとえられる乙女たちが集い、木々の枝はまことに艶めかしい。
詩人は六街の車馬にキャラバンの隊列も見ているはずである。一行はいまわたしの眼の前にある隊商宿を出て唐の都へ向かったにちがいない。