図書館のなかで(土耳古の旅 其ノ十六)

本が好きだから西洋古代の図書館として名高いエフェソスの図書館のなかに立てたのはうれしかった。
眺めのいい部屋』や『ハワーズエンド』の作家E・M・フォースターに『アレクサンドリア 歴史と案内』(1922年)という著作があり、そこにプトレマイオス朝の学園、アレクサンドリアのムーセイオンには大講堂、研究室、観測所、図書館などが設けられ、なかで図書館では「ギリシャ人ははじめてみずからの文学遺産を自覚しはじめ、過去の作品群が図書館に集められたのみならず、その整理、校訂、解釈が行なわれた」とある。(中野康司訳)『イーリアス』も『オデュッセイア』もここで校訂されたし、天文学や暦学、医学など諸科学の研究推進も図られた。
上のアレクサンドリアの図書館についての記述から、ローマ時代においてエフェソスの図書館が果たした役割も類推されるように思う。