日劇ミュージックホールOG会(其ノ二)

懇談会につづいては料理とお酒が運ばれ、松永てるほさんの乾杯の発声で開宴し、しばらくは歓談のひととき。見た限りでは森サカエ、松永てるほ、岬マコさんはよい飲みっぷりでしたねえ。
そうするうちに森サカエさんにリクエストが寄せられた。日本レコード大賞功労賞の受賞者にカラオケでリクエストできるのもおなじ舞台に立った絆があるからだろう。
「わたし、カラオケで歌ったことないのよ」と言いながら、森さんが選曲したのは”Love is a many Splendored Things”、そう、ウィリアム・ホールデンジェニファー・ジョーンズによる香港を舞台にしたラブロマンス「慕情」のテーマである。声量ゆたかで力強い歌声は若いときとまったく変わりなく、ここで森さんの歌が聴けるなんて大感激である。

森さんがカラオケの扉を開けるとあとは堰を切ったようにみなさんがマイクを握る。小浜奈々子さんが歌えば、妹の西崎ぼたんさんも負けていない。ぼたんさんは病後とおっしゃっていたが迫力ある歌声はそんなことを微塵も感じさせず、この歌声にインスパイアされたのか小鳩みきさんが踊りを添えた。
  
そうして小鳩さんはひと踊りのあとは自身がマイクを握り、呼吸ひとつ乱れもみせず朗々とした歌声を披露。これもミュージックホール時代に躰を鍛えた賜物だろう。
そして岬マコさんと松永てるほさんが続く。マコさんはミュージックホールのステージで歌っていたし、てるほさんもレコードを吹き込んでいるから当然だとしても、みなさん魅力的な歌声で、舞台人らしくポーズも決まる。あるいは小浜奈々子さんのレコードもあるのかもしれない。そうしたことも含め先の新聞記事で西条昇氏も語っているように「日劇は語られてもミュージックホールが語られる機会は少なく」資料の整備はこれからの課題だ。
  
てるほさんやマコさんが歌うころになるとわたしは素敵な雰囲気とめっぽううめえ酒で酔眼朦朧の域に近くなっていた。すると「明日があるさ」の合唱の中心にいた森サカエさんからリフレインのところでマイクを渡され、あわてて「明日がある、明日がある、明日があるさ」と歌っていたのだった。
こうしてたのしいひとときをともに過ごした一同のよき明日を願いつつ銀座をあとにした。