正岡子規記念球場


日本に野球が紹介されて間もないころ、正岡子規が野球を愛好し、数々の野球用語を和訳したのはよく知られている。野球の基本を解説した随筆「ベースボール」で子規はベースボールに要するものとしてまず「およそ千坪ばかりの平坦なる地面(芝生ならばなお善し)」を挙げ、これにボールとバットがつづく。
その子規と野球を讃えた「平坦なる地面」が上野公園にある正岡子規記念球場で、上野恩賜公園開園式典百三十年を記念して二00六年七月二十一日にこの名が披露された。
「久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも」は斎藤茂吉「子規と野球」にも紹介されていて、茂吉先生が「『久方の』といふ枕言葉は天(あめ)にかかるものだから同音のアメリカのアメにかけた。かういふ自在の技法をも子規は棄てなかつた」と解説してくれている。万葉の枕詞とアメリカとベースボールが子規のなかで同居している。