「生きることほど、人生の疲れを癒してくれるものは、ない」(伊太利亜旅行 其ノ六十)

ヴェローナからバスでミラノのホテルへ着いたのは夕刻だった。明日はマルペンサ空港から帰国だ。でもまだ夜がある。
「荷造り?」
「寝なければ出来る」
わたしたちのグループは電車でふたたびドゥオーモのある中心街へ行き、ショッピングと食事をしてホテル近くまで帰ったが名残は尽きず近くのバールでささやかなワインパーティとなった。
帰国してもイタリア関係の本を読んだり映画を観たり、マイブームはつづいている。そのなかでウンベルト・サバの「三つの都市」という詩を知った。以下は、ミラノ、トリノフィレンツェの三都市を詠んだうちのミラノの部分。

「石と霧のあいだで、ぼくは
休暇を愉しむ。大聖堂の
広場に来てほっとする。星の
かわりに
夜ごと、ことばに灯がともる
生きることほど
人生の疲れを癒してくれるものは、ない。」(須賀敦子訳)

このあとそっと「旅もまた」と付け加えて「伊太利亜旅行」の記録を終えよう。