ムール貝(伊太利亜旅行 其ノ三十九)


「今夜は散歩して目についたレストランへ入ってみようよ」「当たりかハズレかは運次第」。
添乗員のNさんはピサでの夕食のために二三のレストランを紹介してくれたが、たまにはおあつらえではないところへ行こうとわたしたちは六人で出かけた。小さなレストランというより食堂といったほうが似合いのお店があり、入ると年輩のおかみさんがイタリア語でなにか言っているがわからない。ジェスチャーからすると、ダメらしい。八時にもなってないのにもう閉店なのか。
そこへ従業員の方が現れて互いに片言の英語で話をすると八時開店なので待ってほしいとのことだった。いかにもイタリアという感じ。二十分ほどして入店。結果は大当たり!ワインもおいしく、もうすこしなにか取ろうと乏しいイタリア語、英語を総動員してムール貝を六人で三皿頼んだつもりが、ひとり一皿で来た。思わぬ展開はこれまた大正解なのだった。