「ローマに住みたい」(伊太利亜旅行 其ノ二十八)

コロッセオの工事はウェスパシアヌス治世の七十五年にはじまり、ティトゥス治世の八十年から使用されるようになった。古代ローマの象徴のひとつとして世界遺産の競技場となっているが、もとよりローマ時代の競技場はここにとどまらない。
須賀敦子は「ローマに住みたい」という小文で、ローマでのお気に入りの場所のひとつとしてナヴォーナ広場をあげている。ここは紀元一世紀、ドミティアヌス帝が造らせた競技場のあったところで、そのため長い楕円形の広場となっている。広場のカフェの道路にならんだ椅子にすわってのんびりとした時間を過ごす。ときは五月。
「五月の半ばにローマにいるというのは、それだけでありがたいようなことだ」。
ここを読むだけで心はイタリアへと向かう。「ローマに住みたい」。