「永遠の都」(伊太利亜旅行 其ノ二十五)


一昨年につづいてサンピエトロ寺院を訪れた。ただし今回は外観のみ。
ローマは「永遠の都」と呼ばれる。イギリスの詩人バイロンはコロセウムに永遠を感じた。そのときの詩が『即興詩人』に引用されている。
「このコロセウムのある限り/ローマは永遠であろう」(安野光雅『口語訳即興詩人』)
昔から多くの人々が「永遠の都」を実感してきた。大正のはじめ、のちに慶應西洋美術史と美学を教えた澤木四方吉がイタリアに留学していて、その留学記『美術の都』で「サン・ピエトロとカムパニアの曠野ー人はロオマに入って而して離れてこれを望む時、初めて『永遠』という具体的観念を得るであろう」と述べている。
カムパニアはローマ周辺からイタリア半島南部にかけての地中海に面した荒野を指す。『即興詩人』の重要な舞台で、澤木も森鴎外訳『即興詩人』に魅せられた旅人だった。