マロニエの並木道(伊太利亜の旅 其ノ十五)


フィレンツェ郊外、メディチ家の別荘に向かうマロニエの並木道。トスカーナ州の田園一帯にはメディチ家の十二の館(ヴィッラ)が点在している。
この並木道をあるきながらあらためて戦前の昭和モダニズムのイメージ形成に木々や花が一役買っていることを思った。ライラック(リラ)、プラタナスマロニエ等はどのような経緯でおしゃれな木々として意識されたのだろう。流行歌の歌詞に取り入れられたほかにどのような契機があったのだろう。
イタリア旅行の前に須賀敦子を読んでこれらにサフランがくわわった。
小学生のころ須賀敦子が読んだ本に松田瓊子(けいこ)『サフランの歌』があり、彼女が見たのは謄写版刷りだったそうだが、のちに知った単行本は中原淳一のさし絵で刊行されていた。白樺のある軽井沢の風景、ピアノやバイオリンの話しに夢中になっている主人公たち、サフランという花の響きがもたらす西洋趣味。
*松田瓊子の父は銭形平次で知られる小説家野村胡堂