「ローマの休日」(伊太利亜旅行 其ノ十三)

「銘柄を指定してワインを註文するなんて凄い。詳しいんですねえ」とおなじツアーに参加していた若い男女のカップルにほめていただいた。
そんなふうに見られるのはけっこうだけれど、とんでもない買いかぶりで、イタリア・ワインの銘柄なんて〈キアンティ〉と、前回ナポリのレストランで知った〈キリストの涙〉くらいしか思い浮かばない。
「ワインについては詳しくないんだけど、酒は雰囲気で飲みたいから、『ローマの休日』でオードリー・ヘップバーンが飲んでいたのとおなじワインを註文してるだけなんですよ。ご覧になったことがあるでしょう、あの映画」
「聞いたことはあるんですけど、見てません。帰ったらレンタル店で探してみます」
若い人には「ローマの休日」も遠くなりつつあるのかな。そういえばモノクロ映画は観たことがないという若者もいた。