サン・カルロ教会で(伊太利亜旅行 其ノ六)

ミラノの大聖堂に近く、一大観光エリアの一角に立地しているのが不思議なほどサン・カルロ教会は静謐な雰囲気の裡にある。小さな木製のドアを押してなかに入ると中央に祭壇があり、左右の脇にも祈祷の場所が設けられていて、それぞれに二十本ほどのろうそくが灯された前で数名の信者が敬虔な祈りを捧げていた。ドゥオーモとは異なりここには観光の要素はなく、教会のなかの静謐、峻厳、敬虔なたたずまいは観光客としてのこのこと訪れたわたしをたじろがせた。
薄暗さに慣れた目で見ると、中央の祭壇に向かって右後方に一人の修道女の方が坐っておられた。写真撮影が雰囲気を乱すようで申し訳ない気持のままに英語で、日本から訪れた者ですが、フラッシュは用いませんので写真を撮らせていただけないでしょうかとお願いすると、イタリア語で「スィ」と応じていただけた。