ミラノの大聖堂(伊太利亜旅行 其ノ三)


ミラノを象徴する大聖堂(ドゥオーモ)は大広場にそびえ立ち威容を誇る。建造は一三八六年にはじまり、宗教改革による中断を経て一八一三年に完成した。
この見事な建造物について、須賀敦子ロンバルディア平野の遠くから白く太陽に輝く姿にこころ打たれたとしながらも、ゴシック建築の内部にはどこか違和感を覚えていて、パリのノートルダムを念頭に「ミラノの大聖堂は、外側だけだからだ」「パリやシャルトルの大聖堂のようには、内部の緊張感が外のかたちを支えていない」と書いている。(『ユルスナールの靴』)
ノートルダムもシャルトルも知らないわたしにはこの感覚はわからない。いや、たとえ訪れたとしても理解できないかもしれない。宗教的敬虔の度合は測りかねたが、この日もドゥオーモは観光客のおどろきとうっとりとした表情とため息に充ちていた。