ブルーノートの夜(市俄古と紐育 其ノ十)

ニューヨーク最後の日の午前中はセントラルパークを散策し、そのあとミッドタウンに戻ったたところでにわか雨に遭った。ちょうど近くにニューヨーク・ヤンキースのオフィシャルショップがあり、ここで球団のロゴが付いた折りたたみ傘とキィリングを買った。置物、飾り物よりもこうして求めた日用品のほうが旅の思い出のよすがとなるのでわたしは好きだ。しかもこの日の数日前には松井秀喜選手の引退セレモニーと記念試合が行われていたから、そのことも含めここで思いがけずよいショッピングができた。

さっそく傘をさしてレストランへ向かい、昼食後はMoMAニューヨーク近代美術館)に入館し、絵画、彫刻、オブジエ、写真等その多彩さにおどろきながら多くの作品を鑑賞した。

なかには大人も遊べる美術品もあり、還暦を過ぎた男(筆者)も童心に返り象の鼻をつかんでおりました。

スターバックスでひと休みしたあとジャズクラブ・ブルーノートへ。いよいよ今回の旅の大団円である。
料理とともに注文したカクテル、ブルーノートマティーニはここの名物とのことで、これとブルックリンラガーというビールでほろ酔いになったところでアール・クルー・クインテットの演奏がはじまった。

わたしはフュージョン系の音楽はあまり聴かないが、このアコースティックギターの名手のアルバムには何回か接したことがある。旅先ではちょっと冒険して、ふだんなじみのないジャンルやアーティストを物色するのもおもしろい。ライヴというのはそれだけで大きな魅力で、シカゴでのブルース、今宵のフュージョンともによい経験となった。アール・クルーのギターの音色は美しい。メロディラインもまた。そしてシカゴの一夜とおなじくここでも黒人ドラマーのリズム感に瞠目だった。

ジョン・F・ケネディ国際空港へは自分たちで行かなければならない。案内役はいないので、帰りの車で旅行社の方に空港への時間や経路をしっかり確認しているうちにホテルへ到着。
(「 市俄古と紐育」今回で終了です。ご覧いただきありがとうございます。)