"Chicago(That Toddling Town)"(市俄古と紐育 其ノ一)

七月末にシカゴ在住の友人夫妻を訪ね、その好意に甘えしばし滞在させていただいた。わたしにははじめてのアメリカ旅行である。
このミシガン湖に面したアメリカ有数の都市について知るところは皆無に近いけれど、映画や歌では長年にわたるなじみの街で、わたしのシカゴについてのイメージもほとんどこれらに拠っている。

シカゴを歌った曲ですぐに浮かぶ歌にフランク・シナトラの「シカゴ」がある。
フレッド・フィッシャー作詞作曲による1922年出版のポピュラーソングで、同名の曲が多くなり、しばしば"Chicago(That Toddling Town)"と表記される。
 Chicago, Chicago that toddling town.Chicago, Chicago I'll show you around - I love it.
これが冒頭の歌詞で、シカゴへ行くとなればtoddling townを強く意識せざるをえない。よちよちあるき(toddle)の街にはいろんな意味が含まれているのだろう。ちょっと思い浮かべるだけでも、風の街Windy Cityの異名のあるところだから風に吹かれてよちよち歩きといった事情が考えられる。
黒人の移住者が多く、ジャズが盛んだった。1920年代には多くのジャズクラブが開かれ、ルイ・アームストロングははじめこの地を活動の拠点としていた。ジャズで踊ってお酒に酔えばあゆみもよちよちになるのは避けられない。いつのまにかわたしはそんな眼でtoddling townを眺めていた。