須藤公園

谷崎潤一郎は松子夫人を慕い崇拝し「松に倚る」という意味で倚松庵を名乗った。いま必要あって谷崎松子の前夫根津清太郎について調べている。根津商店という船場の大店の御曹司だったが家産を傾け尽くした。その生涯を描いた小説に三田純市「蕩児余聞」があり作品集『道頓堀物語』に収められている。
文京区の図書館にあるだろうと検索をしてみたところ所蔵されていなかった。めったにないことで、逆に言えばそれだけここのお世話になっている。地方暮らしの経験からすればさすが東京の図書館だと思うし、この格差は解消してほしいと願う。そのばあいは電子書籍化も考慮の余地があるのではないか。
閑静な千駄木の住宅街の一角に昭和八年須藤家が公園用地として東京市に寄付した須藤公園がある。近くの本郷図書館で予約した本を受け取るとよくここのベンチに腰かけて豊かな緑のなかでしばし本を読む。爽やかなひとときだ。さいわい『道頓堀物語』はAmazonの古書に安価でリストアップされていた。