「最後の曲り角」

ジェームズ・M・ケイン郵便配達は二度ベルを鳴らす』の映画化にいち早く応じたのはフランスだった。ジャン・ルノワールジュリアン・デュヴィヴィエマルセル・カルネも企図したが最終的には1939年にピエール・シュナールが「最後の曲り角」の題で映画化した。ついでイタリアでルキノ・ヴィスコンティが(1942年)、アメリカでティ・ガーネット(1946年)が、おなじく1981年にボブ・ラフェルソンがメガホンを取った。
ゆきずりの男とともに夫を殺害するコーラ役は1981年版のジェシカ・ラングがよく知られているが(男はジャック・ニコルソン)、これを「最後の曲り角」で演じたのは「格子なき牢獄」のコリンヌ・リュシェールだった。小林信彦さんが「三九年のフランス映画版を観ている人を知らない」(『小説探検』)と書いているほどめずらしい作品だ。知らなければ済んだものを知ったがために二十年以上あこがれつづけているけれど未だ片鱗すら現れない。
(写真は「格子なき牢獄」)